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十三代 今泉今右衛門とは?
“薄墨”で現代色鍋島を拓いた人間国宝

鍋島藩窯の品格に、吹墨・薄墨・吹重ねを重ねた有田の巨匠

Profile

十三代 今泉今右衛門の経歴と歩み

十三代 今泉今右衛門(いまいずみ・いまえもん、1926〜2001)は、佐賀県有田町に生まれ、色鍋島の伝統を継承した陶芸家です。本名は善詔。1989年、重要無形文化財「色絵磁器」の保持者に認定されました。

白磁、染付、赤・黄・緑の上絵が織りなす色鍋島の格調を守りながら、吹墨、薄墨、緑地、吹重ねなどの技法を開拓。藩窯以来の様式へ現代的な色彩と構成を吹き込み、伝統を変えることで現代の色鍋島を確立した人間国宝として評価されています。

1926年、佐賀県有田町に、十二代今泉今右衛門の長男として生まれる。1949年、東京美術学校工芸科を卒業して帰郷し、父のもとで素地づくりから本焼、染付、上絵まで、家伝の色鍋島技法を学びました。

1952年頃から大川内や有田の窯跡発掘調査に随行し、初期伊万里などの陶片を多数実見。1957年に日展へ初入選し、1962年から日本伝統工芸展を主な発表の場としました。1965年、《手毬花文鉢》で日本工芸会会長賞を受賞し、同会正会員となります。

1975年、父の死去により十三代今右衛門を襲名。翌年、色鍋島今右衛門技術保存会を再組織して代表となり、重要無形文化財「色鍋島」の技術継承を担いました。1979年にNHK会長賞、1981年に日本陶芸展最優秀作品賞、1988年に毎日芸術賞とMOA岡田茂吉賞を受賞。1989年に人間国宝となり、2001年に75歳で逝去しました。

Style

十三代 今泉今右衛門の作風と技法

十三代の核心は、完成された色鍋島の様式を壊すことなく、背景の色と空気感を刷新したことです。写生を基礎とする草花文、余白を生かした構成、端正な器形を土台に、伝統色だけでは表せなかった濃淡と奥行きを追求しました。

吹墨

呉須を霧状に吹き付け、青の濃淡を地文として画面全体へ広げる技法。

薄墨

貴金属を含む黒色顔料を吹き付け、銀灰色の静かな空間を生む十三代独自の技法。

吹重ね

吹墨と薄墨を重ね、青から灰へ移ろう複雑な色彩をつくる晩年の展開。

白磁の明るさ、染付の藍、赤・黄・緑の上絵に、薄墨の灰や緑地の深みが加わることで、草花は浮遊するような生命感を帯びます。藩窯の品格を保ちながら、色絵磁器に近代的な空間表現を持ち込んだ点に、十三代の革新性があります。

Masterpieces

十三代 今泉今右衛門の代表作

《色絵かるかや文鉢》

1969年作、国立工芸館蔵。従来の色鍋島にはなかった「かるかや」を図案化し、余白の中へ伸びやかな葉を配した、襲名前の革新性を示す代表作です。

《色鍋島薄墨草花文鉢》

薄墨による銀灰色の地へ草花を浮かび上がらせた作品。第26回日本伝統工芸展でNHK会長賞を受賞し、十三代の名を「薄墨」と結びつけた重要作です。

《色鍋島薄墨露草文鉢》/《色絵吹重ね草花文額皿》

前者は1981年の日本陶芸展で最優秀作品賞・秩父宮賜杯を受賞。後者は吹墨と薄墨を重ねる「吹重ね」を確立し、晩年へ続く色彩表現を切り開きました。

Market Value

十三代 今泉今右衛門作品の市場での評価

十三代今右衛門は、近現代色鍋島を代表する人間国宝として安定した需要があります。一方で、今右衛門窯の食器・窯作品と十三代本人作の美術作品では評価が大きく異なり、共箱、作品名、銘、技法、サイズ、来歴、状態の確認が欠かせません。

作品の区分市場での参考レンジ
小皿・湯呑・酒器・窯作品などの小品 5,000円〜50,000円前後
本人作の花瓶・額皿・香炉・鉢などの一般作 40,000円〜200,000円前後
薄墨・吹重ねの大型優品、展覧会出品・図録掲載作 200,000円〜800,000円超

※ 上記は公開オークションの落札結果などをもとにした市場の参考レンジで、数寄舎の買取価格をお約束するものではありません。実際の評価は状態・付属品・来歴により変動します。

※ 公開例では、2023年に《色鍋島薄墨草花文陶筥》が16万円、2024年に《色鍋島唐花文香炉》が11万円・《色絵薄墨棕梠文花瓶》が18万円、2025年に《色絵吹墨唐花文花瓶》が9万円、2026年に《色絵緑地草花文花瓶》が4万円で落札されています。いずれもハンマープライスです。

※ 査定は無料です。金額にご納得いただけない場合はお断りいただいて構いません。

Evaluation Points

十三代 今泉今右衛門作品で評価が高い条件

1

十三代独自の技法が明瞭な本人作

薄墨、吹墨、吹重ね、緑地など、十三代独自の技法がはっきり表れた本人作品。

2

写生と装飾性が調和した充実作

草花文、更紗文、露草文、珠樹文など、写生と装飾性が調和した作品。

3

画面構成を広く見せる器種

大型の鉢、額皿、花瓶、蓋付瓶、香炉など、器形と画面構成を広く見せる作品。

4

付属品が揃い状態が良好なもの

共箱・共布・栞・購入資料が揃い、欠け、ニュウ、修復、上絵の擦れが少ないもの。

作品は国立工芸館、京都国立近代美術館、東京国立博物館、今右衛門古陶磁美術館などに収蔵されています。市場では「今右衛門」の名だけで判断せず、十三代本人作か今右衛門窯の製品かを、箱書・銘・陶印・作行から総合的に見極めることが重要です。

FAQ

十三代 今泉今右衛門の買取に関するよくあるご質問

Q. 十三代 今泉今右衛門とはどのような陶芸家ですか?
A. 十三代 今泉今右衛門は1926年に佐賀県有田町で生まれ、2001年に75歳で没した陶芸家です。本名は善詔。東京美術学校工芸科を卒業後、父のもとで家伝の色鍋島技法を学び、1975年に十三代を襲名しました。吹墨・薄墨・吹重ねなどの技法を開拓し、1989年に重要無形文化財「色絵磁器」の保持者に認定されています。
Q. 十三代 今泉今右衛門の作品の買取相場はいくらくらいですか?
A. 小皿・湯呑・酒器・窯作品などの小品で5,000円から50,000円前後、本人作の花瓶・額皿・香炉・鉢で40,000円から200,000円前後が目安です。薄墨や吹重ねの大型優品、展覧会出品作は200,000円から800,000円を超える落札例があります。公開オークションの実績に基づく参考値で、本人作か窯作品かで大きく差が出ます。
Q. 「薄墨」とはどのような技法ですか?
A. 貴金属を含む黒色顔料を霧状に吹き付け、器面に銀灰色の静かな地をつくる技法です。呉須を吹き付ける「吹墨」から発展したもので、白磁と上絵の色に灰色の奥行きが加わり、草花文が浮遊するような表情を帯びます。十三代の名を広く知らしめた作域で、市場でも評価の中心となります。
Q. 今右衛門窯の食器と、十三代本人の作品はどう違いますか?
A. 今右衛門窯では日常の食器や量産の器も生産されており、十三代本人が手掛けた美術作品とは評価が大きく異なります。共箱の箱書、底部の銘と陶印、薄墨や吹重ねといった技法の有無、絵付の水準から判断します。箱と作品の両方が分かる写真をお送りいただければ、まず概算をお伝えします。
Q. 色鍋島と古伊万里はどう違いますか?
A. 色鍋島は江戸期の鍋島藩窯で献上・贈答用に焼かれた高級磁器で、端正な器形、余白を生かした構図、赤・黄・緑を中心とした上絵に特徴があります。輸出も担った古伊万里とは、用途も様式も異なります。古伊万里・有田焼については陶磁器買取の該当ページでも解説しています。
Q. 箱がない花瓶や小皿でも買い取ってもらえますか?
A. 買い取れる場合があります。共箱がないと本人作の裏付けが取りにくく評価は下がりやすいものの、薄墨や吹重ねの技法が明瞭であれば対象となります。購入時の資料や百貨店の値札が残っていれば、あわせてご提示ください。ご不要な他の陶磁器とまとめての査定も承ります。
Summary

まとめ:十三代 今泉今右衛門を知ることは、“色鍋島が現代へ生まれ変わる瞬間”を知ること

十三代今右衛門は、鍋島藩窯から受け継がれた端正な様式と高度な分業技術を、自らの感性によって再構成しました。白、藍、赤、黄、緑の世界へ灰色の薄墨を加え、色絵磁器に静けさ、奥行き、現代的な空気をもたらしています。

その革新は伝統から離れるためではなく、伝統を次代へ生かすための挑戦でした。色鍋島の品格を守りながら、その表現領域を大きく広げた巨匠といえます。

ご自宅やご実家に十三代今泉今右衛門作と伝わる花瓶、鉢、額皿、香炉、茶器などがあれば、洗浄や補修をなさらず、共箱・共布・栞とあわせてご相談ください。底部の銘と箱書が確認できる写真があると、より正確にお答えできます。

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